STEAMの「A」はArtsじゃなくてAuthorshipなのでは

感想文

STEAMの「A」はArtsじゃなくてAuthorshipなのでは

AIによって「作る」という行為が大きく変わりつつある今、STEAMの「A」をAuthorship(作者性)と捉えてみると面白いのではないか。作品の価値が「誰が作ったのか」に生まれる理由を考えました。

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2026.09.28

最近、AIを使った制作について考えている中で、STEAM教育の「A」について、ふと疑問を持つようになりました。

STEAMとは、

  • Science(科学)
  • Technology(技術)
  • Engineering(工学)
  • Arts(芸術・人文)
  • Mathematics(数学)

これらの頭文字を取った言葉です。

もともとのSTEMにArtsを加えることで、科学技術だけではなく、
創造性やデザイン、表現なども含めた教育を目指す考え方です。

もちろん、現在一般的に使われている
STEAMの「A」がArtsであることに異論があるわけではありません。

ただ、AIによって「作る」という行為そのものが大きく変化している現在、
私は別の「A」が必要になってきているのではないかと思っています。

それが、
Authorship(作者性)。

STEAMの「A」はArtsじゃなくてAuthorshipなのでは
STEAMの「A」はArtsじゃなくてAuthorshipなのでは

「作れること」の価値が変わり始めている

生成AIの登場によって、文章、イラスト、音楽、映像、プログラムなど、
これまで専門的な技術が必要だったものを、多くの人が作れるようになってきました。

もちろん、AIを使えば誰でも同じ品質のものを作れるわけではありません。

知識も技術も必要ですし、AIを適切に扱う能力そのものが
一つの専門性になりつつあります。

しかし、それでも「作るための技術」へのアクセスが
以前より容易になっていることは確かだと思います。

すると、こんな疑問が出てきます。

みんなが高品質なものを作れるようになったとき、
作品の価値はどこに生まれるのでしょうか。

私は、その一つが「誰が作ったのか」なのではないかと思います。

「この作品が好き」から「この人の作品だから見たい」へ

ゲームでも音楽でもイラストでも、
「この作品が面白そうだから見る」という段階があります。

しかし、活動を続けている人には、その先があります。
「この人が作ったものだから見てみたい」という状態です。

新作の内容を詳しく知らなくても、作者の名前を見ただけで興味を持つ。
それまでに作ってきた作品、発言、考え方、世界観、判断、こだわり。
そういったものが少しずつ積み重なって、「その人が作った」という事実そのものに意味が生まれていきます。

これは単純な制作技術とは少し違います。
私は、これこそが Authorship(作者性) なのではないかと思っています。

「Artist」ではなく「Authorship」

最初、この考えについて私は「Artist」という言葉を思い浮かべていました。

STEAMのAはArtではなく、Artistなのではないか、と。

しかし、考えてみると少し違いました。

Science、Technology、Engineering、Mathematicsは「人」を表す言葉ではありません。

そこへ突然Artistという職業・人物を入れると、分類として少し不自然です。

そして何より、私が考えていたのは「芸術家であること」ではありませんでした。

  • プログラマーでもいい。
  • ゲーム開発者でもいい。
  • デザイナーでもいい。
  • 研究者でもいい。
  • 文章を書く人でもいい。

何かを作り、世の中へ提示する人であれば、そこには作者性が存在します。

だから、私が探していた言葉はArtistではなく、

Authorshipだったのだと思います。

AI時代の「A = Authorship」

もちろん、これは既存のSTEAMという言葉の定義を変更しよう、
という話ではありません。

STEAM教育におけるAはArtsです。

ただ、AI時代の創作や教育について考えるための一つの視点として、

A = Authorship

と捉えてみると面白いのではないでしょうか。

Scienceで世界を知る。
Technologyで道具を得る。
Engineeringで仕組みを作る。
Mathematicsで論理的に考える。

そしてAuthorshipによって、「自分は何を作るのか」を決める。

AIが発達すればするほど、Technologyの力は大きくなっていきます。

これまで何時間、何日、何年もの訓練が必要だった作業を、AIが一瞬で行えるようになるかもしれません。

だからこそ逆に、

「では、あなたは何を作りたいのですか?」

という問いの重要性は増していくのではないでしょうか。

作る手段が増えれば増えるほど、選択肢も増えます。

選択肢が増えれば増えるほど、「何を選ぶのか」にその人自身が現れます。

そして作品を作り続ければ、その選択の積み重ねが、その人自身のブランドになっていく。

私は、AI時代における創作の価値を考えるとき、

「その人が、その人であること」

が、これまで以上に重要になるのではないかと思っています。

その価値を表す言葉として、私は「Authorship」という言葉がとてもしっくりきています。

西野竜平(署名)